双眼鏡

2017年2月末に、山陰地方に出かけた時のこと。コウノトリを目撃したのですが、その時にまともな双眼鏡を持ち合わせていなかったため、じっくり観察できず、悔しい思いをしました。その時から双眼鏡に強く興味を持ちはじめてしまい、一度に一台しか使えないのにもかかわらず、いくつもの双眼鏡を買い求めてしまっています。以下、双眼鏡の歴史や感想など・・・

(そのうちもう少し体系立てて書きたいです・・・)

 

1. Telster Young Sports 18 GX 

 私が出会った最初の双眼鏡。中学時代に祖父からいただいたもの。「当時1万くらいで購入したが、今の貨幣価値にすると10万ぐらいするものだ」と語られたのを覚えている。

 2017年を迎えるまでたいして双眼鏡に興味もなく、祖父の形見であることや、まあ見えているから新しいのを買う必要もないということで使い続けていた。しかし、落とすかぶつけるかしてしまい左右の視軸がずれてしまい、それ以来置物状態。

 

2. Nikon (nippon kogaku) 8×30A 8x30 8.5°

 双眼鏡に興味を持ち始めた当初、Vixen Ultima 8x32 の外部形態に魅了されたものの、ほどなく絶版と知った。同時に「富士山マーク」のついている日本光学時代の双眼鏡の品質にあこがれを抱く。こちらもとうの昔のモデルであるが、流通量が多いようでオークションで難なく購入。だいぶ高値で落札したが、その分きれいな状態であった。

 実視界 8.5° という広角タイプのポロタイプゆえ、視界は非常に爽快。この恩恵を預かるには裸眼での観察が不可欠だが、接眼レンズの見口部分を取り外すと眼鏡着用でもだいぶ視野は確保される。また重量も 520 g 程度と軽量の部類であり、探鳥にはうってつけのスペックである。これでハギマシコの群れを観察できてだいぶ幸せを感じたものだ。

 だが使い続けているうちに、像の着色が気になってきた。青色系のコーティングゆえ、景色は黄色く感じる。また、もとの状態が美麗ゆえあまり傷をつけたくない気持ちもあり、なかなか出番に恵まれない。

 

3. Vixen Ultima 8×32Z 8x32 8.3°

 8x30A を購入後程なくして、アルティマがオークションに登場。外見はだいぶボロいこともあって3000円程度で落札できてしまった…目は一対しかないのに、早くも同じようなスペックの双眼鏡を複数台所有することに。

 8x30A と比較すると、マルチコート機なので色合いはよりナチュラル。中心部の結像具合に不満はないが、周辺部はだいぶぼやけてしまう。まあ周辺視野の鳥を一生懸命観察するような使い方はしないので、大した問題ではない。そして見た目が悪いだけあって積極的に外に持ち出して使うことに抵抗がなく、またアイレリーフが長く眼鏡でも使いやすいということもあり、一番稼働率の高い機種であった。

 だが実家に帰省した際に機材整理もかねて、ひとまず置いていくことにした。そのうちオーバーホールに出してあげたい。

 

4. Vixen Ultima 7×50 7x50 6.6°

 これまでバードウォッチングに双眼鏡を用いてきたが、星見用の機種も一台欲しいと思うようになった。アルティマの評判がよいこともあり探していたのだが、運よく中古品を1万円で購入成功。

 星を見てみたがものすごくよく見える。上記二つの 30mm 機種では集光力不足のため見えない星でも、50 mm レンズのアルティマでは映し出せる。またホタルを鑑賞する機会があったので持ち込んでみたところ、肉眼では検知できない遠くの発光個体であってもアルティマは見逃さなかった。これは愉快だ。

 5年ぶりに出現した諏訪湖の御神渡りを観に出向いたのだが、早朝でまだ暗いときに到着した。そこで後述のデルトリンテムとこのアルティマとを見比べて、アルティマが圧倒的によく見えることを確認。カワアイサがたくさんいたのだが、これが実によく見える。7x50 というスペックは星見や海洋業務等でよく使われるのだが、バードウォッチングにおいても薄暗い森の中・早朝や夕刻といった時間帯・動きの少ない水鳥観察、といった状況では使えそうだ。もちろん視野が狭いのは不向きな点だが、アルティマは星見用双眼鏡の中でも例外的に軽量(740 g)で、取り回しが良いという点で相殺できそう。

 

5. Nikon 7x35E 7x35 7.3°

 とある方からの頂き物。現物を拝見してみると、対物レンズ、接眼レンズ、プリズムに至るまでかなりカビにやられていた。このままでは使えないのでどうにかしないといけないが、これを自力で掃除できれば、双眼鏡いじりのスキルが手に入りそうだ。ということで分解清掃に着手、普通に使える程度には改善された。対物レンズのカビはコーティングを侵しており、清掃をし終えてもその傷跡が残されてしまった。原理的にはコーティングがはがれたことで光の透過率が低下し、眼に映る像のクオリティは低下しているはずだが、実際に使ってみると問題は感じない。まあ私の眼は全然肥えていないということもあるが・・・

 接眼レンズが大きくアイレリーフが長いせいか、眼の位置が少しでもずれると視界が奪われてしまう(ブラックアウト)。このような使いにくさから、あまり出番に恵まれない。

 

6. Orinox 7x20 

 オークションで 1000 円以下で売りに出されていたので興味本位で購入。この双眼鏡は、知る人ぞ知るカメラ付きの複合機なのである。別ルートでフィルムも購入して、各地で撮影してみたのだが、カメラ機能も維持されていることが判明。ただしピント合わせの仕組み(双眼鏡とカメラの二つのピントを合わせないといけない!)がよくわかっておらず、フルに使いこなせてはいない。

 

7. Pentax Papilio II 6.5x21 6.5x21 7.5°

 50 cm まで近づいて観察可能な、唯一無二の双眼鏡です。この高い接写能力は、陸上の生物観察に絶大なパフォーマンスを発揮します。

 何かいい作例はないものかと、河原を歩いていたところで見つけたアマガエル。双眼鏡の見え方を写真で表現するのは難しいのですが、Papilio II を使うと、このカエルが視野いっぱいに見えます(黄色い円が視野をイメージしています)。これはたいそう感動的で、私が今まで野外で使った光学機器の中で、最も生物観察に適した道具であると確信したほどです。

 そのほか、近づくと逃げられるバッタやハンミョウといった昆虫の観察に使い勝手がよいです。特にハンミョウは、猛スピードで歩きながら視野から外れることもしばしばありますが、Papilio II ならほとんどストレスなく追跡可能です。これは、チドリ達を見ているときと似たような感覚で、さながら、鳥見ならぬ”虫見”をしている気分を味わえます。
 もちろん、観察できるシチュエーションはもっとたくさんあり、そのどれをとっても、今まで体験したことのないようなワクワクさに心躍ること請け合いです。

 屋外でも十分すぎるほど楽しませてくれる Papilio II ですが、博物館等の展示を見るときにも大活躍します。肉眼で見るより、明るく、美しく、かつ詳細に見えます。とりわけ印象に残ったのは、鉱物の小さな結晶が視野いっぱいに広がるさま。その展示の前に文字通り「釘付け」になってしまいました・・・生態展示の生き物を見るときにももちろん使えます。川魚を水槽越しに見たのですが、彼らを警戒させない適度な距離を保ちつつ、そのディテールをくまなく観察できるとわかると、水族館巡りも病みつきになりそうです。動物園でもさぞかし楽しく過ごせることでしょう。

 これは、生き物好きに限らず、みなさんにお勧めしたい双眼鏡です。双眼鏡はデジカメとかパソコン、スマホと違って、丁寧に使えば一生もちますし、基本的な操作方法が分かれば、ほぼ万人が扱え、しかも、電源や通信設備も不要なので、その気になればいつでもどこでも使えます。それでいて、Papilio II はカメラよりも立体的な像を提供し、ルーペよりも広範囲にピントが合い、実体顕微鏡よりもはるかに携行性が高い。生き物観察をする上で、これ以上に使い勝手がよく、しかも私たちをわくわくさせてくれるような道具を見つけるのは、おそらく困難でしょう。

 こんな素敵な道具が、今では1万円ほどで入手可能です。これが高いか安いかは判断がわかれそうですが、Papilio II を手にした日を境にして、観察する楽しみグッと増えるだろうことを思うと、私はこの金額が決して高いとは思いません。

 私は、Papilio II で色々なものを観察して、真っ先に後悔を感じました。もしもっと早くに手に入れていたら、訪れた先々で、そこでしか見られない生き物・展示の数々を脳裏に焼き付けられたかもしれない…Papilio II を片手に、再訪したい場所がいくつも思い浮かびます。もはや単なるお節介の域ですが、こういう経験からも、「これはすごいよ!ぜひ買うべきだ!」などと宣言したくなってしまうようです。

 ちなみに、Papilio II には 6.5 倍のほかに、8.5 倍のラインアップもあります。買うなら 6.5 倍です(倍率が高くても対物レンズ径は同じ 21 mm なので、同じ景色を見た場合、8.5 倍の方が暗いです。また、倍率が高ければ手ぶれもしやすいので、特に博物館や美術館等、明るくないところで利用することを踏まえると、6.5 倍がおすすめ)

 

8. Carl zeiss Jena Deltrintem 8x30 改良型

 ここまで紹介してきた双眼鏡のうち、新品で購入したのはパピリオのみ。まあ新品が買えない経済力ということもあるが、古い双眼鏡が好きなのもまた事実。戦前の双眼鏡にも興味があり、いろいろと調べるうちにデルトリンテムに白羽の矢が立った。これは1925年から70年近く製造されてきた、ある意味で伝説の双眼鏡である。なかでも、戦前のある時期に作られたという、接眼レンズの改良が施され、かつ徹底的な軽量化が図られた「改良型」に興味を抱いた。接眼レンズの設計者の名をとって「リヒタータイプ」と呼ばれることもあるこのタイプだが、海外のオークションサイトでたまに出品されている。一万円程度で出品されていたそのうちの一つをついつい購入してしまう。

 まず本機を持ってみて驚く。ものすごく軽い。本体は 410 g ほどしかない。メインで使っていたアルティマが 520 g で結構軽量の部類だったのだが、見口以外は金属製の本機がこれを下回るのは驚愕だ。そして覗いてみる。アイレリーフが短いので裸眼でないと使えないが、実用できそうな見え味だ。戦前はコーティング技術の黎明期にあたるので、ほぼすべての光学機器はノンコートのはずである。そのためレンズの透過率が悪く、現代からすると性能は時代遅れなのだが、それでもこのデルトリンテムは明るい日中であればあまり問題を感じない。年代を考慮すると骨董品に近い本機だが、軽量ゆえの使い勝手の良さから普段づかいの双眼鏡として頻繁に利用している。

 届いた当初は、ピントリングや右接眼レンズの視度調節機能が固着しており満足に扱えなかった。前者はわりとあっさりと解決したが、後者の固着っぷりはタイトで難儀した。ベルトレンチでひねってもびくともしないし、ドライヤーで温めても意味がなく、超音波洗浄や有機溶剤の浸透もダメ。一度、デルトリンテムに通じている方に相談してみたものの、あまり詳しい情報を提供してもらえなかった。「ヘリコイド 固着」でいろいろ検索して試行錯誤した結果、固着部分をパーツクリーナーに2週間ほど浸漬させて解消に至った。頑固な汚れは時間をかければいいようだ。